ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカと言えば、ロイヤルコペンハーゲンの有名シリーズの中でも最高峰として君臨しているといってよいでしょう。
価格の面でも通常のロイヤルコペンハーゲンとは、段違いですし、パッと見ただけでも金彩の精巧さや絵付けの美しさに違いを見い出してしまうかもしれません。
ここではそんな憧れの対象でもあるロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカについて、様々な面から詳細に解説してまいりましょう。それとともにフローラダニカの類似品、関連のあるシリーズなども一緒にご紹介してみましょう。
まずフローラダニカにはどんなものがあるのか、ご覧になりたい方は以下が便利です。
目次
ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカとは
フローラダニカの概要
フローラ・ダニカは直訳すると「デンマークの花」という意味になります。しかし実際は直訳とは少し違い、フローラダニカというのは実は1761年創刊の植物図鑑の名前で、その図鑑の名前が由来とされています。その植物図鑑に掲載されている約3000種類の植物をモチーフにして、制作された食器シリーズ、それがロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカです。
一点一点異なるモチーフで非常に多くの種類の食器が制作されました。まずはその歴史を紐解いてみましょう
歴史
ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカは1790年に発表されたシリーズです。
当時、デンマーク王室が植物図鑑の下絵を描いた絵付師であるJ・C・バイエル(Johann Christoph Bayer)に依頼して作成されたシリーズです。
フローラダニカが製作された目的は、ロシアの女帝エカテリーナ2世への贈り物であるとされています。絵付師のバイエルは、植物図鑑の全種類の植物を食器に表現するように依頼され、1802点の作品を完成させたとされています。全種類の完成を待たずにロシアの女帝、エカテリーナ2世が没したため製作が中断されてしまったというのがフローラダニカの歴史の始まりです。
当時のフローラダニカの作品群の一部はクリスチャンボー宮殿やローゼンボー離宮に保存されています。
その後もフローラダニカはデンマークに関連する、大きなお祝い事などがあった際に再生産されるなど、断続的に生産がおこなわれてきました。
1862年頃、デンマークのアレクサンドラ王女とウェールズのアルバート・エドワード皇太子(のちにエドワード7世・1841-1910)の婚約に伴う生産や、1947年頃のエリザベス王女とフィリップ王子の成婚に伴う生産、1964年にもデンマークのアンナ・マリア王女とギリシャのコンスタンティノス2世の成婚に伴う生産などが代表的です。
このようにしてフローラダニカはロイヤルコペンハーゲンの有名なシリーズの中でも一際目立った輝きを放つ高級シリーズとしての地位を高めていきました。
ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカの他との違いは何か
ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカは特に価格の面ではわかりやすく、ほかの有名なシリーズとは一線を画したシリーズとなっております。
ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカは何がそこまで違うのか。その「違い」のフォーカスしてフローラダニカを見てみましょう。
ロイヤルコペンハーゲンの代表的なシリーズ
ロイヤルコペンハーゲンには数多くの有名なシリーズがありますが、フローラダニカの「違い」を説明するために、まずは超有名な2種類のシリーズをご紹介いたしましょう。
ブルーフルーテッド
まずはロイヤルコペンハーゲンと言えば、ほとんどの人がこのシリーズのデザインを思い浮かべるでしょう、ブルーフルーテッドですね。
ブルーフルーテッドは、ロイヤルコペンハーゲンで最初にできたシリーズで、代表作と言って間違いないでしょう。白地に青のおなじみのコントラスト、おなじみの模様ですね。
こちらは裏面ですが、「1」の数字が入っていますね。これはロイヤルコペンハーゲンのパターンナンバー、No1がブルーフルーテッドであることを示しています。
ロイヤルコペンハーゲンの伝統を担っているシリーズのひとつでしょう。
詳しく知りたい方は以下に詳細にご紹介しています。
ブルーフラワー
こちらはロイヤルコペンハーゲンで2番目にできたシリーズ、ブルーフラワーです。廃盤となりましたが、ロイヤルコペンハーゲンを代表するシリーズのひとつと言って間違いないでしょう。
ブルーフルーテッドと同じく白地に青のコントラストで、花束が描かれ、いくつもの種類の花からペインターが自由に組み合わせて書くシリーズで、ひとつひとつが一点物と言えるシリーズです。
ロイヤルコペンハーゲンのブルーフラワーの裏側には、2番目にできたシリーズではありますが、「10」の文字が刻まれています。
ブルーフラワーについても以下で詳しくご紹介していますので、チェックしてみましょう。
フローラダニカの「違い」:デザインと製造工程
ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカは元々が約3000点もの植物図鑑を手本、モチーフとして製作されていました。そのため今もフローラダニカは1点1点違うモチーフで製造され、植物が図鑑のように精密に、繊細に描かれているのが大きな特徴です。
ペインターが自らカットした特別な筆で、植物を精密に、正確に、優雅に描き切っているというのがまず何よりの特徴と言えます。
上の写真のフローラダニカはアルプスに咲くサクラソウ(学名:primula integrifolia)という植物をモチーフにしており、以下と見比べてもかなり正確に描かれていることが分かるでしょう。
フローラダニカの違いはそれにとどまりません。高度に緻密な植物のペイントに加え、美しい金彩が施されています。
上の写真のフローラダニカでも、プレートの角はジグザグになったデザインで、もちろん金彩もジグザグに施されています。金彩は24金で非常に分厚く施され、凹凸をしっかりと感じるほどの作りになっており、それにもかかわらず金彩は非常に細かく手作業で完成されています。
成形や装飾はすべてロイヤルコペンハーゲン熟練の高度な技術を持った職人の手作業で行われており、多彩色は淡色から順に彩色を重ねて何度も焼成を繰り返してやっと1枚のお皿が完成します。24金の金彩もあわせると最低7回の焼成を必要するのがロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカの他との大きな違いと言えるでしょう。
フローラダニカの「違い」:絵付師の人数
ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカは、ひとつの作品の絵付けの工程を2人のペインターによって行っています。
熟練の職人の一人が植物のモチーフを精緻に仕上げ、もう一人が金彩を描きます。
例えばひとつの作品にいくつかのパーツがある場合は、たったひとつのアイテムの絵付けを数人がかりで完成させることもあります。例として、スープチューリンであればフタ、本体、スープスタンドと3つのパーツに分かれています。
このような場合、フタの植物、フタの金彩、本体の植物、本体の金彩、スープスタンドの植物、スープスタンドの金彩と計6名ものロイヤルコペンハーゲンの一流の職人の手が入って初めて絵付けが完成することになります。
フローラダニカの「違い」:裏面のバックスタンプなど
こちらは上の写真のロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカのプレートの裏面です。多くの情報が書き込まれているのがお分かりになると思います。
黒い色でPrimula integrifolia Oed.とかかれているのはラテン語の学名です。これで描かれている植物の種類が同定できますね。まずこのような植物名が書かれているというのがフローラダニカの他のシリーズとの違いのひとつとなります。
このようなラテン語の学名が多くのフローラダニカにみられますが、小さなお皿で書くスペースがない場合などは省略される場合もあります。
またおなじみのロイヤルコペンハーゲンのスタンプと、3本波線も確認できます。
スタンプの左側にfaxでしょうか、右側にはyxというアルファベットの並びが2か所みられます。これが片方は植物を描いたペインターのサインで、もう片方が金彩を描いたペインターのサインです。ペインターのサインが2つあるのはフローラダニカがほかのシリーズと違う点ですね。上でご紹介したように2人のペインターが絵付けを仕上げているということが分かります。ただしペインターサインがひとつしか入っていない場合もありますので、サインの数が2つないとおかしいという訳ではありません。
また20と3590が見られますがこれは他のシリーズでも見られるパターンナンバーや型番です。バックスタンプについては以下で詳しく解説していますのでチェックしてみましょう。
ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカに関わるシリーズ
ファウナダニカ
ロイヤルコペンハーゲンにはファウナダニカという、フローラダニカの兄弟のような、シリーズ名まで類似したシリーズがあります。フローラダニカは直訳すると「デンマークの花」となりますが、ファウナダニカは「デンマークの動物」となります。
ファウナダニカのファウナは動物という意味がありますので、植物ではなく動物をモチーフにしたフローラダニカがファウナダニカ、という理解で合っていると言えるでしょう。
「フローラダニカ」に比べて絵付けの面積が多いのは一目瞭然で、動物本体だけでなくその前景や背景も緻密に絵付けされ、こちらのヘラジカのプレートなどは全面に絵付けが施されているようなお品です。
ファウナダニカを絵付け出来るペインターはコペンハーゲン社と言えども数人とも言われており、時代を代表するマイスターペインターともいうべき職人達が渾身の技術で描きあげたお品であるといえるでしょう。通常のフローラダニカと比べても手間のかかり方が違ってくるお品であるといえると思います。
そのため現存する作品がフローラダニカに比べても、極めて少なくなっています。製作期間も短く、1960年代から80年代とされており、希少なお品ですのでもし見つけたらラッキーですね。
「ファウナダニカ」は「フローラダニカ」と区別するためか、プレートの縁の少し内側にある長方形の装飾がミントグリーンに彩色されています。フローラダニカはこの長方形の部分がピンクに彩色されています。プレートによっては長方形の彩色が省略されているものもあるので、フローラダニカにしろ、ファウナダニカにしろ、必ずこの長方形の装飾があるわけではありません。
一番わかりやすい見分け方は、フローラダニカは植物、ファウナダニカは動物、ですね。
魚デザインのファウナダニカ
こちらはロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカの兄弟のような類似品であるファウナダニカの、魚をモチーフにした珍しいプレートです。
魚をモチーフにしたファウナダニカも絵付け面積が広く、卓越したロイヤルコペンハーゲンのペインターによって仕上げられていることが一目瞭然ですね。こちらの魚デザインのファウナダニカもフローラダニカとして販売されていることもありますが、フローラは「花」という意味で、ファウナは「動物」という意味ですから、どちらかというと魚は動物よりですので、ファウナダニカとして間違いはないでしょう。
まあ、ファウナダニカよりもフローラダニカのほうが圧倒的な知名度があるので、フローラダニカとなっていても多めに見て、問題なしといたしましょう。
フローラダニカだろうがファウナダニカであろうが、ロイヤルコペンハーゲンの素晴らしい技術で丹精込めて仕上げられているお品であることには違いありません。ロイヤルコペンハーゲンの中でもあこがれの対象であるという地位は揺るがないお品ですね。
実際に魚を見ていても今にも泳ぎだしそうな精巧な絵付けです。お皿の裏には学名が記載されていますのでこちらも実際に調べてみましょう。
いかがでしょうか。非常に精巧に描かれていることが分かりますね。
ニシキュウリウオというのは、ちょっとわかりにくい名称ですが、要はヨーロッパのワカサギと思っていただければ大体正解です。あの北海道などで氷に穴をあけて釣るイメージのあの魚ですね。
ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカのコラボ作品
ロイヤルコペンハーゲンはフローラダニカの230周年記念として、2020年に香川県の伝統工芸「香川漆芸」とコラボレーションしたティーカップのセット「望」の完全受注生産を行いました。
ロイヤルコペンハーゲンは日本の漆の会社ともコラボレーションを行っています。発表されているのは2種類で、「望 野点茶櫃」(のぞみ のだてちゃびつ)と「望 野点小箪笥」(のぞみ のだてこだんす)です。
構成はそれぞれ以下の通りで、日本とデンマークの伝統の融合した高級なセットとなっています。
「望」 野点茶櫃
内容:フローラ ダニカ モカカップ 5点、茶櫃、茶筒、菓子盆、茶托 5点
価格:2,200,000円(税込)
「望」 野点小箪笥
内容:フローラ ダニカ ティーポット 1点、ティーカップ&ソーサー 2客 デザートプレート19CM 2点、小箪笥、茶筒、リネン ティーナプキン 2組、ロイヤル コペンハーゲン ジャム、紅茶
価格:3,520,000円(税込)
フローラヤポニカ
2017年、日本とデンマークの外交関係樹立150周年を記念して、ロイヤルコペンハーゲンはフローラヤポニカ(Flora Japonica)を発表しました。
簡単に言うとフローラダニカの日本バージョンですね。ヤポニカが日本を表しています。フローラダニカがデンマークの植物をモチーフにして作られているのに対し、フローラヤポニカは日本の植物をモチーフにして、フローラダニカの伝統的な作り方を用いて作られているという訳です。
特別なコレクションですから現存数も多くはありませんが、フローラダニカに関連した商品、類似品のひとつと言えるでしょう。
ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカ、写真ギャラリー
ここでは優美なフローラダニカを目の保養にもなるように、ずらっと表面で並べてみました。ごゆっくりご覧ください。
以下5枚の写真は一枚のフローラダニカのプレートの表や裏を並べたものです。
以下にカップのフローラダニカも掲載しておきます。いくら見ても美しいですね。
ロイヤルコペンハーゲンのファウナダニカ、写真ギャラリー
この記事でご紹介したファウナダニカの写真を何枚か掲載しておきます。
ロイヤルコペンハーゲンのフローラダニカ、ファウナダニカどちらも素敵ですよね。
気になる方は編集部もおすすめのこちらで、気に入るデザインのフローラダニカの在庫があれば、価格も対応も良心的なアンティーク、ヴィンテージ店なのでおすすめです。新品で買いたい方はロイヤルコペンハーゲンのショップなどに足を運んでみましょう。
いかがでしたでしょうか。お気に入りの一枚が見つかったのであれば編集部はとてもうれしく思います。
ロイヤルコペンハーゲンの最高峰ともいうべきフローラダニカをご紹介いたしましたが、もちろんロイヤルコペンハーゲンにはたくさんの魅力的なお品があります。色々とロイヤルコペンハーゲンのことを知っていただけると嬉しく思います。