1764年に誕生し、現代でも私たちを魅了し続けるバカラ。バカラの歴史を主要なグラスとともに紹介してまいりたいと思います。
目次
- 1 バカラのグラスの歴史的特徴
- 2 バカラのグラス、誕生の歴史
- 3 バカラのグラスの歴史を年表で追う
- 3.1 1764年 バカラ誕生
- 3.2 1816年 初めてクリスタルを製造する
- 3.3 1825年 アルクール登場
- 3.4 1878年 第3回パリ万博
- 3.5 1899年 セビーヌ登場
- 3.6 1931年 ローハン登場
- 3.7 1933年 パーフェクション登場
- 3.8 1936年 バカラのおなじみの丸い刻印が入り始める
- 3.9 1937年 タリランド登場
- 3.10 1939年 パルメ登場
- 3.11 1948年 米国支社をニューヨークに設置
- 3.12 1964年 ドンペリニヨン登場
- 3.13 1975年 ハーモニー登場
- 3.14 1980年 マッセナ登場
- 3.15 1995年 ベガ登場
- 3.16 2010年 年号グラスの登場
- 3.17 2017年 経営権の変更
- 4 メゾンバカラでバカラのグラスの歴史を感じる
- 5 バカラの歴史の集大成、恵比寿にあるシャンデリア
バカラのグラスの歴史的特徴
一等地や百貨店などで見かけるバカラ、言わずと知れたクリスタルの高級店です。バカラのグラスは1764年からの長い歴史の中でどのような特徴を持っているのでしょうか。
バカラは製造した製品のうち消費者に渡るのは6-7割とされています。歴史的に品質基準が極めて高いためで、残りは不適合品として破棄されています。2級品やアウトレットなどのグラスはバカラに関しては存在しないとされています。
きわめて技術力が高いバカラ社はフランスのM.O.F、フランス最優秀職人を50人以上輩出している輝かしい歴史があります。日本の皇室もバカラを注文しており、フランス王室はもちろん、イギリス王室、ロシア皇室、モロッコ王室、タイ王室からも注文を受けています。世界中の最高レベルのクリスタルグラスとして認識されている証左となります。
商品は、テーブルウェア(グラス、デキャンタ、ピッチャー、プレートなど)をはじめ、ペーパーウェイト、アクセサリー、花瓶、香水瓶、オーナメント(置物)、シャンデリア、キャンドルスタンド、ランプシェードなど多岐にわたり、それぞれの商品に歴史を刻んでいます。
バカラのグラス、誕生の歴史
バカラは1764年、フランスのロレーヌ地方、バカラ村に誕生しました。
当時のフランスは、多くの戦争を経て、国全体が疲弊している状態でした。もちろん経済的にも落ち込んでいました。そんな歴史的背景の中でロレーヌ地方の当主であるモンモランシー・ラバルが、当時他のヨーロッパ諸国に比べて遅れていたガラス産業に目をつけ、参入を考えていました。当時のフランス国王、ルイ15世はガラス工場の設立を認可し、バカラ村にガラス工場が建設されたのがバカラの歴史の始まりです。
これが今でも我々が目にする「バカラ」の歴史の原点です。意外かもしれませんが初めからクリスタルを製造していたのではなく、当初はガラスの瓶や窓を製作していました。そして設立から約60年、バカラのクリスタルの歴史の原点が訪れることとなります。
バカラのグラスの歴史を年表で追う
1764年 バカラ誕生
フランス王ルイ15世により、バカラ村(ロレーヌ地方)での工場設立が許可される。
1816年 初めてクリスタルを製造する
バカラがクリスタルの製造を歴史を紡ぎ始めたのは1816年のことです。バカラはサンルイとの一時的な合併時にクリスタル製造の技法を学び、製造を開始します。ご存知の通り、サンルイは世界的にもバカラと並んで歴史上、知名度の高いクリスタル工房です。バカラとサンルイは1800年代半ばまで、合併、提携を続けていましたが、1860年に「バカラ」の商標を登録し、バカラ独自の歴史を作っていくことになります。
1825年 アルクール登場
アルクール侯爵の注文から、「アルクール」の歴史が始まります。バカラの旗艦モデルといっても良いアルクールはおなじみの丸いブランドロゴのデザインの元となるシリーズです。
1825年に原型が登場したアルクールシリーズは、長い歴史を持ち、そのため様々な形状、サイズのワイングラスやタンブラーが存在します。六角形、フラットカットが特徴のアルクールは、バカラにとって最も伝統あり、大切にされているモデルといっても過言ではないでしょう。
アルクールがシリーズとして登場したのは1841年からという見方もありますが、こちらではアルクール侯爵の注文から、原型ができた1825年としております。1841年に今と同じ形のアルクールが登場しました。
1878年 第3回パリ万博
バカラは1878年、パリ万博で3度目のグランプリを受賞します。バカラは1851年のロンドン万博から出展していますが、パリ万博(1855年、1867年、1878年)において3度グランプリを受賞した歴史があります。フランス王室御用達となり、他国にも知られる存在へと進化し、バカラブランド飛躍のきっかけとなりました。
1899年 セビーヌ登場
1899年、セビーヌが登場します。こちらのシリーズは女性に人気のシリーズで、シンプルに見える中で、ボウル部分に美しいエッチングが施されています。
1931年 ローハン登場
ローハンが登場するのが1931年、様々なサイトで1855年とされていますが、この製法はその時点では確立しておりませんでしたし、アメリカ等のサイトでは1931年となっています。正しいローハンの歴史は1931年からと推定すべきでしょう。
ローハンはアルクールとはガラッと変わって、薄いクリスタルにアシッドエッチングで蔓草模様を描いた、長く続くバカラを代表する歴史あるシリーズです。
ローハンも長い歴史の中で、ステム(脚)の長いものやボウルの形状が違うもの、様々な派生種があるシリーズです。派生種のモデル名には、シャトーブリアン、クヴィユ、コンブールなど別名が付いていますが、ローハンとして売り出されていることもしばしばです。以下に詳しくご紹介しています。
1933年 パーフェクション登場
1933年、シンプルなシリーズ、パーフェクションが登場いたします。パーフェクションは「完璧」という意味です。長い歴史を持つグラスながら、今でもワイングラスのスタンダートな形状をしていることには驚かされます。そのフォルムはワイングラスのスタンダードとして違和感のないフォルムをこの時代からすでに体現していると言えるでしょう。
1936年 バカラのおなじみの丸い刻印が入り始める
バカラの歴史上、グラスの底部などにおなじみの丸い刻印が入り始めたのは1936年のことです。それ以前は、ブランドシールを貼っているなどでしたので、剥がれてしまうとバカラかどうかわかりにくくなってしまいますね。刻印については以下の記事で詳しく説明しておりますので、ご興味があればご参照下さい。バカラの刻印には意外と様々なバリエーションがあって驚かれるかもしれませんね。
1937年 タリランド登場
1937年に登場したとされるタリランド。こちらも長い歴史を持つシリーズです。
ワイングラス型とコップ型のモデルがあります。フラットカットが特徴で、アルクールに少し似ているかもしれません。大胆なフラットカットに対して口元は薄く、上品な口当たりを実現しています。
タリランドは1937年からのシリーズとされますが、1933年のバカラのカタログに掲載されていますので、実際には製造自体はもっと歴史が古いと考えるのが妥当でしょう。バカラは刻印を1936年から入れ始めていますが、刻印のないタリランドも多く見られますので、間違いなく1933年には存在していたでしょう。
1939年 パルメ登場
パルメは1939年にパリ近郊の大統領用のハンティングロッジで使用するために作られた歴史を持つシリーズです。大統領の別邸ランブイエ城でも使用されています。楽園に住む架空の鳥がデザインされたモデルです。
1948年 米国支社をニューヨークに設置
1948年バカラ社はアメリカのニューヨークに支社を設立しました。
1964年 ドンペリニヨン登場
ドンペリニヨンは1964年の「バカラ創立200周年展示会」で発表された歴史的なシリーズとされています。ボウル部分の底から美しく一直線にシャンパンに泡が立つように考えて設計されたグラスとされています。その名の通り、有名なシャンパン、ドンペリニヨンを飲むためのグラスと言えます。
1975年 ハーモニー登場
ハーモニーは1975年に発表されたシリーズ。グラス底部から口元まで一気に直線のカットが入ったモデルで、どちらかというと男性に人気のシリーズです。
1980年 マッセナ登場
マッセナは1980年に発表され瞬く間に人気となった有名なシリーズです。グラス下部から一気に深いカットが施され、まるで炎が揺らめいているような印象のあるデザインが世界的な大ヒットとなりました。カットが深く、バカラクリスタルのきらめきや透明感を存分に感じられる煌びやかなシリーズです。
1995年 ベガ登場
1995年に登場したのがベガというシリーズです。何といってもステム部分が特徴的で、そろばんの珠が連なったようなデザインです。ベガはこと座の一等星、いわゆる織姫星です。その名の通りバカラのグラスの中にあっても一等星のように目立ちキラキラと輝きます。
2010年 年号グラスの登場
2010年、バカラ社は日本限定で年号の入ったグラスの歴史を開始します。2010年のベルーガから年号の入ったグラスが発表されました。
2017年 経営権の変更
2017年、中国の投資会社フォーチュン・ファウンテン・キャピタル(沣沅資本)がバカラの保有会社から株式88.8%を約1億6400万ユーロ(当時のレートで約205億円)で買収しました。元々スターウッドキャピタルグループがバカラを保有していましたが、それを買取った形となります。そもそもバカラの株式は買収時10%程度しか公開しておらず、ほぼ非公開株式の取引です。つまりスターウッドキャピタルグループが譲渡先としてふさわしいと考え、売却した形となります。
ラインナップ等、実際に大きな変更は見られませんが、製品のクオリティ等には大きな影響はないでしょう。
メゾンバカラでバカラのグラスの歴史を感じる
2003年にパリ16区のエタ=ジュニ広場付近に設立されました。バカラ美術館であり、バカラのグラスも販売しています。レストラン&バーも併設されており、バカラの起源とも言えるシリーズ、アルクールのグラスを使って営業されています。ノアイユ子爵夫人の私邸であった建物を改装して現在の形になりました。
157灯の巨大シャンデリアや13.5メートルのガラステーブルなど大きなバカラの作品も展示されているほか、バカラの歴史や、クリスタルの製造工程などが上映されており、フランス貴族がまさに目の当たりにしていたであろう空間を体感することができるといっても良いのではないでしょうか。
バカラの歴史の集大成、恵比寿にあるシャンデリア
東京、恵比寿ガーデンプレイスには世界最大級のバカラのシャンデリアがあります。クリスマスシーズンは特に人気を博しております。ある意味、バカラの歴史の集大成と申し上げたもよいかもしれません。
バカラシャンデリアのライトアップイベントもありますので、バカラのシャンデリアをご自身の目で見てみたい方は、ぜひ足をお運びになってはいかがでしょうか。シャンデリアには一つだけ赤いクリスタルが使われており、その赤いクリスタルを探すというのも面白い定番の楽しみ方の1つです。